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2001.06.23.気仙沼

今日は仙台で、共育を考える会主催の講演会がある日でした。講師は、北村小夜さん。今日は、東北本線でとろとろ揺られて行きました。タイトルは「教育改革の中で、障害児教育はどうなるか」でした。

障害児も普通学校へ・全国連絡会で活躍している北村小夜さんは、元中学校教員。僕は、学生時代に本を読みました。講演を聴きました。僕が考えていたことは、間違っていないよと、教えて頂いた思いでいます。今回も、な〜るほどねと、頷きながら、聴きました。

北村小夜さんの多岐に及ぶお話の中で「権利を主張しないけれど、サービスは要求する」という話があり、ふむふむと聴きました。僕も、そんな昨今の動静に、違和感を感じています。ちゃんと主張しようぜ!って気持ちになっちゃうんです。自分の損にはうるさいけれど、隣人への差別攻撃には目を伏せられるって人を、僕は信用できないんです。

北村小夜さんと、いろいろお話したいことがあったのですが、新幹線の時間が近いということで、お話できませんでした。ん〜、また今度ですなっ。

帰り道の東北本線で、「石の花」を読み返していました。坂口尚さんのマンガです。僕にとって、ロマン・ロランの「ジャンクリストフ」と並べ称せられるくらい、重い位置づけのマンガです。第二次世界大戦のユーゴスラビアのパルチザンを描いたものですが、「平和」や「自由」について、とっても大切なことを教えてくれるんです。学生時代に読んだときよりも、何だかとってもリアルで、含蓄を感じます。長くなるかもしれませんが、セリフだけの引用をしてみますね。

(「石の花」全6刊 坂口尚 希望コミックス 潮出版社)
6刊 p130...ドイツ軍のスパイを装う連合軍のスパイ・イヴァンと、ドイツ軍のマイスナー大佐の会話...
「いずれ...こういう日が来るだろうと思っていたが...。ひどい傷だな...それも、きみの強情ぶりだが...」
「この戦争は、必ず連合軍が勝利するぞ...! ナチスの行為は絶対許されないことだ 絶対...!」
「そんなことをいいに来たのかね イヴァン...」
「マイスナー きみは...秩序ある世界建設のためだなんてうそぶいていたが、きみの正体もとどのつまり」
「イヴァン...きみは少し感情的になり過ぎている。ナチスの保身と名誉欲ばかりの将軍たちはいざ知らず、私は嘘偽りなく世界の調和を願っているだけだ」
「力づくの調和をな...」
「君は まだ人間を信じているのか あの人間たちを! いくら化粧や高級な服で身を装っても いくら栄養剤で体の健康を保っていても いくら知識を詰め込んでも 食べものが暗い胃袋の底で不消化のままドロドロと塊となっているように 野心やうらみ 嫉み 憎悪がうづまいている。卑しく 粗暴で 野蛮...原始人のままだ! 科学技術がどれほど進歩しようが あいも変わらぬ野蛮な者たちが この社会を作っている。そういう社会から 犯罪も争いも 無くなるはずはない!」
「きみが そんなこと いえる立場か!」
「まあ 待てよ。ナチスといえども一糸乱れずとはいかん。私の納得できぬこともあるのは わかってほしい。 話を戻そう。 人間は 思想を発明し 宗教を発明もした。しかし、真の平和はやってこない。むしろ 争いの種子になっている。思想は思想とぶつかり 一つの宗教さえ 二つに割れ 宗派を生み争う。同じ平和を求めてこの始末だ。なぜなら 人間は公平に客観的に判断することなど とうていできない具合になっているからだ。人間は伝統やら慣習の衣を意識しようがしまいが着せられている。ある家で生まれ、ある町で育ち、ある国で働き、ある人と出会い、ある本と語り...いつもある条件の中で生きている。いうなれば この世の中は 無数の偏見がせめぎ合っている海原だ。渦巻き 逆巻き 波は激しさを増しこそすれ 静まりはすまい。話し合いから 平和な世界国家を実現できるわけはないんだ! 実現可能な方法はただ一つ。ウムをいわせぬ巨きな力こそが 統一と調和を生み 維持できるのだ!」
「では 百歩下がって きみが信念と理想に燃えた崇高な目的で闘っているとしよう。それならば あの十字軍のように 人々の血を流してもかまわないというのか!?」
「あれは しょせん縄張り争いだ。我われは違う!」
「もし目的が正しければ 手段を正当化できるのか!? それこそ客観的に判断できない神でない人間が 勝手に力の方法を正義だといっていることじゃないか!!」
「神でもない人間が 勝手にものさしをつくっているのは きみの認める民主主義の中にもいたるところにある。法律もそうだ。裁判所では 人間が人間を裁いている。議会はどうだ。過半数を取り 少数意見を切り捨てる。数の暴力だ!!」
「ああ...きみはヒトラーがローマ帝国にならい、ビスマルクのT解決するのは鉄と血だけであるUという言葉にならい、第三帝国の悪夢を見ているのと同じ悪夢を見ているのだ。アレキサンダー大王やジンギスカンのように 征服欲にとりつかれた人間なのだ!! とりつかれた...おれの知っているマイスナーは そんな男じゃない...妹思いの...」
「イヴァン きみは力づくといって非難するが きみはわかっているはずだ。民衆がそれを嫌ってはいないということを...。民衆は抽象的平和論より 現実足らないものを補う力を求める。女が弱者を支配するよりは 強者につくのを好むように。民衆も 自由を受け入れるより 支配者を好む... 自由... 生まれたとき そなわっていた自由な心を 不安と混乱の世の中で持ち続けるというのは やっかいなものだ。絶え間なくつきつけられる問いに 何が善で 何が悪かを 自由な心で自ら選ばなければならないということは重荷だ。しかも 生まれたときから 何色にも染まっていなかった自由な心は 次つぎに ある条件という衣を着せられていくんだからな。世の中は ますます複雑になっているし いくつもの思想の道ができ いくつもの宗教の花が咲き、いくつもの神が手まねきする。そのひとつひとつを 自由な心で選ぶというのは とてつもないエネルギーがいる。そんな自由は いっそ誰かに預けてしまった方が楽なのだ。ある国家に ある宗教に ある伝統に ある慣習に。自ら問い 自ら悩み 自ら選ぶ自由より ある権威に従ってしまった方が 楽なのだ。 やがて どこまでが他人の不正で どこからが自分の不正なのかも わからなくなる。その方が 自分を責めずにすむし 心安らかに暮らせるじゃないか。人はパンのみでも生きられてしまうものなのだ。またパンを与えてくれる者が正義と思わなければ生きていけない。たとえ反抗を試みても この複雑で迷路だらけの世の中を相手じゃ 自らの非力を思い知らされるだけだ。どうにか 仲間らしき人間たちが集まっている場所を見つけ 駆け寄ると やはり不消化の塊をかかえている人間ばかりだ。なじったところで その人間たちと自分は 本来少しも違いはないのだから 鏡の中の自分を責めていることになってしまう。やがて 疲れ あきらめ 人間は 群れから離れるよりも 群れの中に自分を消す方が安心できると気づく。人間は自由より 何かの奴隷でいることの方が どんなにほっとするかしれないのだ!」
「ドイツ人の多くが ナチスに良心を預けたように...」
「人間は...風の色を理解しようとせずとも生きられるんだよ...」
「しかし...しかし...人間は ふと...ほほをかすめる風に たずねてみたくなることもあるだろう。T自分は なせ生きているのか...UTなぜ...U」
「人間は このうつろい易い 過ぎ去りゆく世界で 唯一絶対のものを求めたいのだ。 自分をささえてくれる 確かなものをな... だから だからこの闇の地上に虹が必要なのだ。風は応えてはくれぬ... 力の虹 力でつくった虹が応えるのだ。暗黒の中にかかり 大地を照らす それが人間に安らぎを与えるのだ...」
「風は 応えてくれないが... どこか どこか未知から吹いてくる予感はする...」
「予感...予感か... そう思い続けるのも... 自由だ... きみなら 自由の重さに耐え抜いていけただろう... きみなら... イヴァン... きみは私の心からの友人だった きみのことは忘れないだろう... 」
「マイスナー! きみの きみの体の中では あのマリーネの笑顔も笑い声も消えてしまったのか! きみの虹ではなかったのか!」
「そう 私の虹だった... しかし... 人間は幻であることに気づいたら いつまでも幻を見ていられはしない...」
「そんなきみが 力の虹をつくるだなんて」
「ナチスの人類愛 世界の恒久平和だ 愚かで野蛮な人間たちに まだあどけないマリーネの命は奪われた。 しかし 私は復讐する気はない。奴らは 罪を犯したことにすら気づいていないだろうからな... 私は 世界に秩序を与え 真紅のバラに咲こうとする人間が高貴を失わずに咲くことのできる丘を創りたいと思っているのだ...」
「そのために 多くの人間の自由を奪うのか!」
「自由を捨てたがっているのは その多くの人間たちじゃないか」

いやはや、ついつい長く紹介してしまいました。またいつか別なくだりも紹介しますね。

上の写真は、去年の今日、気仙沼に行ったときの一枚です。ああ、あれから1年なんだなぁ。