昨日へ    2002年07月26日   明日へ

三国峠

昨晩は、夜遅く、溶けるように眠ってしまった僕。今朝は、いつも通りに早くに目を覚ましました。旭川の朝です。寅さんのポータブルラジオから、ラジオ体操が聞こえました。眠っている寅さんを起こさぬよう、そっと帰りの荷造りをしました。

荷造りを終え、寅さんが起き、下宿の大家さんに挨拶をして、僕は旭川を発つことにしました。2泊という話もありましたが、Mちゃんの居酒屋にも行ったので、今回は、よしとしたのです。僕は、暑くなりそうな曇り空の下、バイクを東に走らせました。

正直言って、どこかでテント泊も考えたのです。知床に行くことも考えました。けれども、ぽっと思いついてやってきた北海道とは言え、帰省です。やっぱり親元に帰りましょうかと、夕張方面に向かうことにしたんです。

しかしながら、最短ルートで帰る僕ではありません。層雲峡を抜け、三国峠を越え、山奥の温泉・岩間の湯を目指しました。99年の夏、今回と同じR1100GSと、あちこちの温泉を回りましたが、入らなかった温泉がいくつもあります。今回、そのうちの2つ(できれば3つ)に入っていこうと思ったんです。

岩間の湯です。層雲峡側から三国峠を越えた幌加の手前(北)を、右(西)に入ったところ...と、地図にはありました。僕は、GSで、ダートの小道をほいほいと入って行きました。さすがに、ギターを後に載せていると、重い! ひょいひょいとは走らずに、静かに行きました。いかにも、ヒグマが出るぞぉ!って感じの山。石狩岳を眺めながら、行きました。こ1時間ほど走って、そろそろ飽きたぞってあたりで、生きている木の幹に、赤ペンキで呪われたような文字で「岩間温泉」とありました。傍らには、首都圏ナンバーのセローがありました。どこじゃろなとうろうろしていたら、人恋しそうな顔をした僕と同じくらいの年齢のおじさんが、川の向こうから現れました。
「歩いて5分くらいだよ。熊が出そうで怖くて、すぐ帰ってきたよ」
川を裸足でじゃぶじゃぶこいで、彼が来ました。
「靴脱いで行かないと、濡れるよ」
「大丈夫、慣れてっから」
僕は、石の頭をちょんちょんと跳びながら、川を渡りました。セミの声が聞こえました。急に、ジーンズが重く感じました。やっぱり半ズボンが好きだなぁと思いながら、はっ!とデジャブがよぎりました。なるほど、そうだ! 僕が家で荷造りしていたとき、テントやシュラフと一緒に、熊鈴がいたんだ。あいつは、こっちに視線を向けていて、僕は何か感じたんだけど、あいつを連れて来なかったんだ...。熊鈴は、きっと松山町の家で、暑い夏を過ごしていることでしょう。そして、
「俺を連れていけばよかったのによぉ」
とニヤニヤしていることでしょう...。そうです。やっぱり熊の、気配です。僕は、手ぶらなので、仕方がない、でっかい声で歌いながら歩きました。まさか、ギターを弾きながら、山道を行くわけも行かないしね。5分もしないうちに、岩間の湯に着きました。
「君には、渡る勇気があるかな?」
と、丸太橋が待っていました。それはそれは、本当に丸太だけの橋。僕は、ぴょんぴょんと渡りました。

岩間の湯は、なかなかいい感じでした。白系です。硫黄が香ります。湯加減は、水も入れられ、ほどよく長く入れる感じ。乳頭温泉郷の鶴の湯を思わせる感じです。ヒグマの気配はあるものの、ゆ〜っくり入っていたい温泉でした。

バイクのところに戻ったら、ヤマハのRaidが来ました。僕は、
「これなら、川を渡れるよ」
と言いました。首都圏ナンバーの彼は、
「んじゃあ、行ってみよう」
と、じゃぶじゃぶして、僕が歌っていた道を、バリバリと行きました。やれやれ。僕は、国道に戻り、大好きな然別湖で、珍しくコーラを飲んで目を覚まし、トムラウシを目指しました。もう一つ、目指すのはヌプントムラウシ温泉。これまた、山の中の無料混浴露天風呂です。

舗装道路で、すらすら行けたと知ったのは、後でした。僕は、オ温泉に行くダートを行きました。40kmのダートで辿り着くとは、なかなかハードだなぁと思いつつ、これもまた北海道よなぁと、走りました。菅野温泉への分岐で、止まりました。なんてことでしょう、立ちゴケしてしまいました。ガソリンがぽたぽたと落ち、焦りました。ふぅ〜、こういうときは、まず一息入れて、一休み。ヘルメットを置き、汗を拭いて、ため息ふぅ〜。ど!っこいしょ!と、何とか立てました。やれやれ。

一度倒しちゃうと、どうも不安が増します。あいかわらずのダート道、後に載せていた空き缶を落としたシーンを、バックミラーで目撃しました。
「ごめん、帰りまで待っていてね」
と声を掛け、進みました。途中で、舗装路に巡り会って、驚き、しばらくしてまたダート。そしてまた1時間も走ったでしょうか、やっと着いたヌプントムラウシ温泉には、ワゴン車のお爺さんが、ステテコ姿で洗濯物を干していて、驚きました。犬くんが、僕を見て、
「おまえも、すきだなぁ」
みたいな顔をしていました。

ヌプントムラウシ温泉は、下呂温泉系。すべすべぬるぬるの、僕の好きなタイプのお湯でした。しかしながら、アブがいっぱいで、長湯はしませんでした。噴出口がすぐそばにあり、鹿の湯を思い出しました。実際、近くですしね。

さあて、後は帰るだけかと思ったら、後に載せていたビーチサンダルが片方ありません。こりゃ、落としたんだなぁ...。帰り道、徐行運転で行きました。空き缶のほど近いところで、救出しました。見ると、いっぱい穴があいていて、さきっぽがちぎれ、変な液体に濡れていました。ああ、キツネです。
「食べられっかな?」
とかじって、ちょいとちぎって、でもおいしくなくて、
「ふ〜んだ!」
と、おしっこを掛けたのでしょう。やれやれ、お持ち帰りじゃなかったとは、よほどおもしろくなかったんだろうなあ。

清水で、ラーメンを食べ、何だか空気圧が低くて、日高で空気を入れ、夜道を夕張(紅葉山)まで帰りました。テント泊ではなくて、つまんないと言えばつまんないのですが、まあ父さん母さんと話したりしたので、よかったかな。