昨日へ     2003年03月19日   明日へ

なごり雪です。朝、教室に行くと、いつもと違った服を着たみんなが、「雪だよ」と窓の外を差しました。「なごり雪って言うんだよ」と、ネクタイを締めた僕が言いました。教室も、昨日三年生が飾り付けてくれて、いつもとはまるで違っていました。あれこれといつもと違うものの、みんないつもと同じように、ばかな話に花咲かせたり、ストーブの前で「はだしのげん」を読んだり、掲示してある小さい頃の写真を見入ったりしていました。

朝の会。健康観察。みんなの名前を、いつものように呼び、みんなはいつものように答えました。でも、今日でおしまいです。

僕は、みんなの前で泣かないというめあてを持っていました。「泣かせてあげるからね!」とにこにこと言う六年生の期待には、応えない決意でした。ですから、努めていつもとおんなじ感じでふるまいました。

卒業生入場は、9:25。時間があったので、みんなで低学年棟に行きました。一年生教室で、一年生の席にみんなで着きました。「ちっちぇ〜」と、口々に言うみんな。「君たちが入学した頃は、この教室で、このくらいの机だったのに、何だか保護者の皆さん!みたいな感じだねぇ」そんなことを言いながら、せっかくだからと写真(上の写真です)を撮りました。窓の外は、雪でした。

さあ、卒業式。入場の先頭は、担任の僕。みんなに(しっかりね!)とゼスチャーをして、入場しました。六年生のみんなは、なかなか堂々としたものでした。五年生の頃は、どうも大舞台に弱く、いろいろと心配をしました。でも、いつの間にかに、みんな大物になりました。僕は、ただ見守っていました。

卒業証書授与。マイクなしで、みんなの名前を呼びました。敬称の「さん」を付けて、はきはきと呼びました。みんな、会場の中央で、参列したおうちの方へ、決意・抱負と感謝を述べて、証書をもらいました。おうちの方が、ハンカチをしきりと使っていました。

式辞、祝辞、記念品贈呈などを経て、「別れのことば」。ことばも歌も、みんないい感じでした。途中、職員が歌うところがありました。僕は、ぽろぽろになるかなと心配していましたが、無事はきはきと大きな声で歌うことができました。

卒業生退場。僕は、会場の後のほうに移動です。ステージ上の卒業生席に合図を送り、みんな一人ひとり真っ直ぐ僕の方に向かって退場してきます。僕は、みんなに「証書授与のときも、おうちの方へ話すときも、きっちりと目を見るんだよ」と言っていたので、退場するみんなの目をしっかり見ました。ぽろぽろしちゃうと困るので、目が合うと目配せをしたり、そっと親指を立てて合図したりしました。何人かが、いつものように応えてくれました。みんなが退場して、僕が一礼して、後に続きました。みんなは、真っ直ぐ教室です。体育館から教室へ向かう廊下の入り口に、目を紅くした一年生のK先生がいて「よかったですよ」と言ってくれて、僕の目から一気に熱い液体が溢れました。教室に行く廊下で、せっせと拭いて、教室に行きました。みんな、ほっとしていました。

本当は、すぐに卒業写真を撮るところでしたが、写真屋さんの到着が遅れ、随分待ちました。みんなで、卒業アルバムにサインをし合ったり、写真を撮り合ったりしました。時間があって、僕は卒業生と、オセロをしたほどでした。ちょっと、いい時間でした。

体育館で、写真を撮り、教室に戻りました。雪の向こうに青空が見えました。

教室で、当初45分くらい時間があると言われていたので、かつての写真をテレビに映して見ようかと思っていました。でも、もうお昼です。僕は、昨日の学習の様子を話しました。そして、一年生との授業の後、「木曜日に来ようかな」という声があったことを紹介しました。そして、「君たちには、もう席はないんです」と話しました。君たちには、もう席はありません。机も椅子も、別な小学生が使います。ロッカーもありません。教室もありません。君たちには、もう小学校に居場所がないんです。私は、担任ではありません。四月になったら、きっと私は君たちではない子どもたちの担任になります。来年担任する子どもたちと、今年担任した君たちが、同じように困っていたら、私は君たちではなく、来年担任する子どもたちを助けます。悪いけど、きっとそうします。でも、安心してください。君たちには、新しい机が、椅子が、教室が、待っています。君たちの前には、必ず新しい担任の先生が登場します。絶対です。君たちは、もう卒業しました。ですから、明日からのことを考えてください。夢見てください。楽しみにしてください。

そんな話の後、みんなへの感謝を話し、さようなら。小学校生活最後の「さようなら」をしました。僕は、最後まではきはきと話しました。頑張りました。玄関で見送りをしました。空は、青空になっていました。春の風が吹いていました。

職員室で、卒業式一切が終えての打ち合わせをしました。卒業学年担任からということで、話そうとしたら、いっぱいいっぱい溢れてきてしまって、大変でした。二年間のあれこれが、まさに一気に駆け巡り、ああ〜、みんな、本当に行ってしまったんだ...と、急に実感しました。今日は、みんなの前でぽろぽろしたり、ぐちゃぐちゃしたりせず、はきはきと別れを告げられました。頑張ったなぁ! 自分で自分を褒めました。そして、一気に疲れが襲ってきました。

お昼に、学校を出ました。春の埃っぽい風の中、いつもの道を戻りました。いつもと違う雲でした。種ともこの歌を聴きながら、いっぱいいっぱいため息をつきました。ああ、いつも終わってから後悔ばかりしている...。

昼から、仙台に行きました。そして、夜遅くなって、家に戻りました。やれやれ疲れた、ほっとした、寂しくなった...。気持ちに、ぽっかりと穴が空いてしまいましたが、今年高校を卒業したMちゃんから手紙が届いていて、うんと嬉しくなりました。反戦デモに出て、インタビューに答えた記事が、小さく新聞に載ったんです。それを読んで、感想だとか、この頃思うこととか、いっぱい書いていてくれました。いろんな人とつなぎ合っている実感を持てるということ。そんな嬉しさを、いっぱい感じた今日でした。