昨日へ     2003年12月28日   明日へ

今朝起きて、連れ合いのぴよさんとお父さんお母さんは、ガイドさんと故宮博物館見学ツアーです。団体行動が苦手な僕は、別行動をさせてもらうことにして、カメラとメモと地図と折りたたみ傘を持って、ホテルを出ました。とりあえず、鉄道に乗ってみたかったんです。ガイドブックにたまたま載っていた新竹(シンズー)を目指すことにしました。

ホテルを出て、少し行ったところで、まだ閉まっている桶屋さんの写真を撮っていたら、通行人の男性に、よく分からないのですが、何か怒鳴られました。僕は、ぴっくりして「何ですか?」と日本語で言ったのですが、彼は独り言を言いながら、去っていきました。しばらくしてから、ドキドキしてきました。ああ、僕は自分のことばが伝わらない街にいるんだ...そんな実感をしました。

台北の駅に着きました。新竹方面に向かう列車の時刻を調べました。とりあえず、停車駅の少ない自強号に乗ろうと思いました。切符を買うために、窓口に行きました。「新竹 自強号 9:00」とメモに書いて、見せました。180元。僕は、切符を手にして、地下のホームに向かいました。

すぐに列車は来ました。僕は、適当に乗り、空いている席を見つけようとしたのですが、みんな指定席らしく、切符を見ながら、みんな席を探しています。僕は、あらためて自分の切符を見てみると「無座」と書かれてありました。ああ、これは席がないということだ...しかたなくデッキに立ち、外を眺めながら、揺られました。

台北だけでも、いろんな発見があると思うのですが、やっぱり外に出て、正解でした。車窓から見える畑、工場、お墓、よくわからない建築物...どれも新鮮です。

新竹には、1時間半ほどで着きました。僕は、地図ももっていなくて、ガイドブックに載っている古い建物の配置図だけが、手かがりでした。まあ、別に目的地はないので、ぶらりぶらりと歩き始めました。予想通り、辺りに日本人観光客はなく、何てことはない日常の街でした。僕は、綿シャツにカーディガン姿でしたが、気温が高いので、カーディーガンも脱ぎました。Tシャツになろうかな?というくらいの気温。

本屋さんがありました。入ってみました。学習参考書コーナーに行ってみました。小学生用のドリルとかに興味があったんです。でも、やっぱり中国語で、いまいち分からない。絵本コーナーに行きました。五味太郎の絵本があったので、買いました。これは、教室に置く本になるだろうな。

少し歩くと、小学校がありました。新竹市立東門國民小學です。覗きました。たぶん、孔子だろうなぁ、大きな像がありました。

僕は、また歩き始めました。古い建物がいっぱいある新竹です。1時間ほど歩いたでしょうか。小さな食堂を見つけました。僕は、何か麺を食べたかったんです。でも、どうも僕の中国語は伝わらない。注文をするとき「この店で一番のお勧めはなにですか?」という意味の中国語メモを、カタカナで読みました。「ツェーガティエンダミンツァイスーセンモ」。伝わりません。お店のご夫婦は、首をかしげます。僕は、中国語で書かれているメモ(這個店的名菜是什麼)を渡しました。でも、顔を見合わせて、困っています。仕方ない。僕は「これと同じものをください」と、今作っている麺を指さしました。これは、何とか伝わったようです。日本語が伝わったんじゃなくて、身振りが伝わったんですね。

そして「ツースオ」と言いました。それは、伝わり、僕はトイレ(厠所)に行くことができました。席に着き、テレビでニュースを見ました。だんだん中国語の音に慣れてきたものの、やっぱり分かりません。でも、何となく眺めました。麺が来ました。豚足を煮たものを、うどんの上に載せたものです。とても、おいしかった! イメージ的には、沖縄そばの濃いものって感じ。25元。僕は「ハオツー(好吃)! シェイシェイ(謝謝)」と言って、店を出ました。おかみさんが、優しく微笑んでくれて、それがうれしかったな。

僕は、また当てどなく歩きます。適当に、自分の嗅覚を信じて、おもしろいものを見つけようとしながら歩きます。デパートがありました。野外特設ステージ前に、女の子たちがいっぱい座っていました。どうやら、アイドルのステージがあるようです。どれどれ僕も観てやろうと思ったのですが、近くの表示を見ると、2時からのステージ。いやはや、そんなには待てないわい。デパートの入り口では、店員が入店するお客の体温を一人ひとりチェックしていました。ああ、ここでもSARS 対策です。

ふと、ある交差点で立ち止まりました。向こうの道で、何やらお店がわいわいと出ている様子です。行ってみると、市場のようなにぎわいです。果物、魚、肉、衣類、アクセサリー...ありとあらゆるものが並べられていました。観光客は、どうやら全然いない模様。ぎっちりと、家々は軒を並べていて、ソーセージが物干しざおに吊るされていました。みんな、早口でいろいろおしゃべりしています。狭い路地なのに、スクーターは、がんがん入ってきます。野良犬は、お構いなしに眠り続け、僕はその喧騒を味わいました。狭い路地に足を踏み入れながら、台湾情報を伝えてくれたSさんが、地方都市の小さな道は、治安上心配と書いていましたが、まあまさにそんな感じ。でも、とても人間くさい心地が、僕には温かでした。

まただらだらと歩いていきました。かれこれ、3時間は歩いています。ガイドブックに載っていた新竹市政府が突然現れました。ちょうど修繕中で、全館をシートで覆われていましたが、ご丁寧にシートにはシート下の新竹市政府の絵が描かれていて、遠くからみると、シートに覆われているとは思えないようでした。

新竹市政府は、日本が台湾を植民地支配していたときの建造物です。周囲には、同じように植民地時代の建造物がたくさんありました。少し行くと、めちゃめちゃにぎやかなところがありました。城隍廟(ツェンホワンミアオ)です。お寺っぽい屋根が、ぎっちり詰まったお店の向こう側に見えました。入っていかない手はありません。僕は、そのにぎやかな中に入って行きました。食べ物の店がぎっちりでした。ちょうどお昼ということもあり、迫力でした。お団子みたいものに汁をかけたもの、牛そぼろみたいなものをごはんにかけたもの、ビーフン、麺、貝などを入れたお好み焼きみたいもの、団子、ドーナツみたいもの、鶏の皮...狭い通路をどんどん人は流れ、お店の人は怒っているみたいな感じで、人を呼び、小さく円いテーブルを人がいっぱい囲んで、いろんなものを食べていました。僕は、食べたい気持ちがうんとあるのですが、迫力にめげてしまい、どうも自分の身の置き場を見失い、店の人に声を掛けられないでしまいました。音と匂いと迫力に押され、何となく大きな滝の下で、水量に圧倒されている感覚でした。僕は、その店群を抜け、お寺に入ってみました。

お寺には、たくさんの人が参拝していました。日本のお寺とは、随分様相が違います。長くて太い線香を立て、立ち膝でお参りしていました。べろを出した大きな神様が傍らにあり、小さい子どもが「すごいね」みたいなことを(きっと)言いながら眺めていました。大人は、たくさんの神様の前を通るたびに、一つひとつに手を合わせていました。しばらくそんな様子を見ていましたが、もう少し奥があるようなので、入ってみました。すると、そこには焼却炉みたいなものがありました。口をこちらに開けています。大きなものです。お供えしたもののを、燃やすところらしく、老夫婦が供物らしきものをくべていました。奥には、小さめな祭壇のようなものがあり、祭事の最中でした。お経は、まるで音楽でした。ああ、音楽って、空間を支配するもんなんだなぁと、感じました。すぐ後ろでは、おばさん方が大きな鍋を洗っていました。でっかくて早口で言い合っている声は、不思議と祭事のお経を妨げない感じでした。どこかで見たことがあるなぁと、考えていて、ぴんと来ました。CHARAが出演している映画「スワロウテイル」の一場面。不法滞在していた、ある少女のお母さんが亡くなったときの場面。少し、胸につんと来ました。

お寺を出ると、そこはまたお店の雑踏。よくよく見ると、観光客っぽいのは、僕だけで、他の人たちはみんなお寺で供養を済ませた人たちのようでした。きっと、麺を頬張っていた子どもなんかは「えっ? お参りに行くの? じゃあ、あそこでごはん食べるよねっ」なんて、食べることセットになっている場所なんじゃないかと思いました。そう思うと、なおさら居づらくて、僕は結局食べずに、出ました。

店の続きのように、市場がありました。けれども人はそう多くなく、むしろ道の上にシートを掛けているので、薄暗く、寂しげでした。店の人たちも、めいめいにごはんを食べていて、休憩って感じ。暗い中なので、少し不安も過りましたが、どんどん入っていきました。小さな猫を見つけました。話しかけたんですけど、答えてくれませんでした。日本語は苦手なのかもしれません。

市場のようなところを抜け、適当に歩きます。人があまり多くない道。途中で、また小さなお寺を幾つも見つけました。カトリックの教会も見つけました。急に、デパートがあって、びっくりしました。通りの向こうに、駅舎が見えたので、ああ終わりだなぁと思いました。咽が乾いたので、生ジュースを買いました。開き直って「これください」と日本語で言いました。観光客慣れしていなくて、お店の人は慌てました。慌てているので、僕も慌てて「Please This one」と唐突に英語が出ました。おばさんが、ジュースを渡してくれるところでしたが、お姉さんがそれを戻し、冷蔵庫から冷えているものを持ってきてくれました。「謝謝!」ああ、これしか伝わらないのが、とてももどかしい。

駅に着き、切符を買います。帰りは、さすがに座っていきたいです。メモ帳に「108 復興 14:10 海 台北」と書きました。そして、その下に「無席? 有席?」と書きました。後から気付いたのですが「無座?」のほうが本当ならよかったんですよね...。幾つかある窓口の中、若い駅員のところを選びました。メモを見せて、買います。「無席? 有席?」を確認したいのですが、中国語が分かりません。「Sit? Stand?」と、聞きました。駅員の女性は、にっこり笑って「Sit」と言いました。ああ、よかった。

トイレに行って、戻ってくるとき、物乞いの青年がいました。みんなに手を合わせて歩いています。全然だめみたいです。僕のところにも来ました。「ごめんなさい」と言いました。別段、がっかりするようではありませんでしたが、僕は僕自身に話しかけました。「それでいいの?」「この元、何に使うの?」 何となく試されているような気持ちになりました。彼がもう一度来たとき、コインを渡しました。彼は「!」って顔をしました。僕は、適当にコイン渡したんですが、それは10元硬貨。日本円で30円相当だったんです。きっと彼の視線には、僕の財布の中のお札も見えていたはず。彼は、きっともっとくれると思ったんだと思います。でも、それから「はい、これもね」とあげることもできず、何となく恥ずかしかったな。

恥ずかしい気持ちを払拭するため、早めに改札を通り、ホームのベンチにいました。コーラを買いました。飲みました。台湾の味がしました。

列車は、ゆっくりやってきました。席を探して、座り、少し眠りました。1時間半ほどで、台北に着きました。小腹が空いていて、あああのお寺で頑張って食べるべきだと後悔しました。駅の近くのお店で、餃子を買いました。本当は、ホテルまで持っていくつもりだったのですが、道端で座って、一つだけ食べました。一つだけのつもりでいたのに、結局全部食べちゃいました。ああ、竜の子太郎的には、僕は龍になってしまうんですよね。

駅前のアップルセンターに入りました。小さなお店。見るまでもなく、出ました。ホテルに、夕方集合ということだったので、ホテルに戻り、シャワーを浴びて、ぴよさんたちの帰りを待ちました。

故宮博物館などを見学してきたぴよさんたちと合流し、デパート上の食堂に行き、食事をしました。ああ、台湾の夜でした。

写真は、新竹の市場での1枚です。

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