始業式です。6年生は、さよならの始まりです。みんな、久しぶりに会ったものだから、浮かれちゃってわいわいとにぎやかでした。子犬がじゃれている感じ。でも、背がぐんと大きくなっちゃって、びっくりしたな。さっそく背の順の並び方をあらためたりしました。今日は、勉強は進めません。「ああ、学校は楽しいわぁ」って感じられるような時間を取ります。これ、いつもです。「もっと休みが長ければいいのに」って気持ちを、多かれ少なかれ持っているところで、そんな気持ちに追い討ちを掛けるようなことは、したくないんです。みんなで、わらべうた「さらばたし」。これまた、浮かれちゃってわいわいとにぎやかでした。
今朝は吹雪で、車で送られてきた人が多かったのですが、晴れ間も見えて、少し安心していました。けれども、風が止みません。そこで、急遽集団下校となりました。僕は、担当の地区の子たちと歩き始めました。
冬の天気は、どんどん変わります。歩き始めた途端に、すごい風。低学年の子は飛ばされそう。横殴りの雪に、見通しがなくなり、自動車のライトもよく見えません。「絶対、車道に出るなよ!」と僕は怒鳴ります。みんなの顔は、どんどんピンクになり、口数が減りました。右側から風を浴び、雪がズボンの右側にくっつきます。「凍ってきちゃったよ」という声が聞こえます。僕は、まずいなぁと感じながら、戻るよりも進むことを考え、みんなと歩いていきました。「何か温かい食べ物を言って」と話題を向けますが、あまり盛り上がりません。小さい女の子がぽつりと言います。「きょうはね、帰ったら、ばあちゃんと、赤いきつねを食べるんだ。」「そりゃ、いいね、○○ちゃん。わたしゃ好きだよ、赤いきつね」すると、○○ちゃんは、白くなったまつ毛でちらっと僕を見上げ、「おもちもいれるんだ」と話してくれました。そうだねぇ、辛いときは、おいしいものを考えます。好きな人のことを、思います。
車道に雪が吹き込まないように冬だけ建てられる防雪柵。それが切れた途端に、みんなどうしようもなくなりました。「とにかく、あの牛小屋まで行こう」50mとは感じられないくらい長い道のりでした。息を止めて泳ぐ感覚で、たどり着きました。小屋の陰で、みんなでほっと息。教職員の車が来たのですが、みんなが乗れるわけではありません。近くの公共施設まで行くので、地域の方の大きな車に来てもらうよう手配してもらいました。そして、またみんなで歩き始めます。「○○地区は、大丈夫かなぁ」と、全身かちかちになった6年生が、他の地区のことを気にしていてくれて、ああ温かいなあ。「うん、あっちは向かい風だからな」 そんな思いを共感し合える仲間は、たぶんずっと幼なじみとして付き合っていけることでしょう。「先生、指が動かない」と小さい子が言います。「ぐーぱー、ぐーぱーってしてごらん。だいじょうぶだよ」とは言うものの、ドキドキしてしまいます。結局、近くの公共施設の軒で一休みをして、大きな自動車に来ていただいて、送ってもらいました。
車が来て、ほっとして、乗り込んで、空がぱっと青くなりました。でも、またすぐに吹雪。僕も同乗しました。みんなを送っていただき、ほっとしました。車なら、ほんの少しの距離なんです。でも、歩くと全然違うんです。
今日は、みんなと一緒に吹雪にさらされて、よかったなぁと感じています。神様が、僕を試していたのかもしれません。どんな吹雪でも、みんなと共に歩いていく、そんな自分でありたい。そんなことを確かめた始業式の日でした。
写真は、台湾・北投で撮った1枚です。温泉街の東屋で、お爺さんが、尺八を吹いていたんです。冬なのに、緑が鮮やかでした。