函館に着きました。バイクなしのフェリーは、ひょっとしたら初めてだったかもしれません。ゆっくりと北海道に上陸。雨がしとしとしていました。雨具を着ないで、さっそうにフェリーから走り出したバイクライダーが、気になりました。
フェリー埠頭から、函館駅まで、タクシー。ひとまず、朝市をぐるりと巡り、手近なお店で「イカ刺し定食」「いくら・うに丼」を食べました。ん〜、まあまあかな。
函館駅は、かつてとは全然様相が異なり、驚きでした。寂しいくらい。路面電車も走っていないんじゃないかと、駅前を行くと、ああ、路面電車はかつてと同じ。懐かしい友に会った気持ち。
さて、函館駅から列車に乗ります。大沼公園行き。ジーゼルカーは、がらがら。昔懐かしい行商のおばあさんは、大きな荷物を大きなふろしきに入れていて、座席に「よいしょ」と下ろします。窓は、大きく開けました。天井の扇風機が回ります。懐かしいJNRの文字が入る扇風機。がらがらと音をたててジーゼルカーは、山に入っていき、大沼公園駅に着きました。
霧がかかっていて、駒ケ岳は見えません。次の列車を待つ間。僕は、旅ギターのマーチンさんを、駅前で弾くことにしました。ハーモニカで、何曲か演りました。お客はいません。がらんとした朝の大沼です。しかしながら、ここのところ部屋でも歌うことは少なく、ギターの練習ばかりしていたので、歌うのが恥ずかしいような勇気いるぞ!って感じでした。ギターをちょろちょろいじって、ハーモニカ。
さあ、何か歌うぞって思ったところ、駅前でワゴン車を降りた高校生・運動部・合宿開け...みたいな女の子たちの会話が耳に入りました。「あれって、リハーサルしてんだよね」...まあ、そんなもんだからそれでいいんですけど、さっき「虹の彼方へ」やったじゃん...あれもリハってわけかぁ〜って思って、何となく演る気をそがれました。勇気でなくなりました。ふぅ〜 やっぱりでかいギターでないと、音が届かなくてダメだなぁ。勇気が出ないのを、ギターのせいにして、長万部行きの列車に乗りました。
長万部行きの列車も、よく停車します。鈍行なんだから、一つずつ進むのは当然ですが、特急列車を先に行かせるために、しばしば停まるんです。森で停まったとき、いかめしを売っていました。いわゆる弁当売りのバイトの高校生。車窓を開けて、買うことができるのが、鉄道の旅って感じ。でも、弁当は、長万部までお預け。またジーゼルカーは、がらがらと進んでいきます。
鉄道の旅は、いいです。長万部行きの列車は一両編成。ほぼ満席。窓から風が入り、右手は海。噴火湾の穏やかな海を見ながら、進みます。ボックス席になっているので、互いの顔も見えます。みんな、海を見たり、本を読んだり、話をしたり。赤ちゃんが、外を見て、若いお母さんと話しています。そんなほほ笑ましい佇まいを、みんなで共有している感じ。みんなが知らんぷりしない雰囲気。あれこれとよけいに話さなくても、小さな幸せを分かち合えるようなそんな希望が、一両編成のジーゼルカーにはありました。
長万部に着きました。ちょうどお昼です。次の列車まで、1時間以上。僕たちは、かなやのかにめしを買います。以前、僕がバイクで北海道に来て、その帰り道。二股ラジウム温泉に素泊まりしたとき、僕はこの弁当を買い、宿に向かったのでした。かにめしは、グッドだなぁ。ついつい、缶ビールを買いました。夏の空を見ながら、駅前のバス停のひさしの下のベンチで、ゆっくりもぐもぐ、そしてぷはぁ〜。ついついロング缶を2本飲んじゃっいました。ああ、おてんとさんの下・青空を眺めながらのビールは、いいわぁ。
長万部からの列車に座り、僕は眠ってしまいました。ビールのせいでしょう。ふと気付くと、もう東室蘭。終着駅です。東室蘭でも、時間が少しだけありました。改札を出て、ふらりとしようと思いましたが、なんてことなくて、すぐ戻りました。気付くと、回りはすっかり懐かしいしゃべり言葉。ああ、北海道です。
東室蘭から乗った乗った列車は、海を見ながら、走ります。線路と国道が並行して走っています。国道を行くバイクのにいちゃんが二人、手を振っていました。窓を開けたこちら側でも、みんなが手を振ります。なんてことなく、幸せを分け合っているんだな。幸せを作っているんだな。きっと、窓が閉まっていたら、あっちの世界とこっちの世界なんだけど、窓が開けられていたら、一緒になれる。特別でなく、手を振っていたおばさんたちが、少しまぶしかったな。
苫小牧で乗り換えて、札幌行きの電車は、窓が上しか開かない新型。でも、やっぱりクーラーはなくて、窓は開けられ、送風機が動いていました。気のせいかもしれないけれど、ただそれだけの違いなのに、心が少しだけ閉ざされた感じがしたなぁ。すぐに南千歳に着き、降りました。懐かしの南千歳。古い空港が見えます。いつもここに立つときは、夕焼けです。静かに時間が過ぎていきます。
南千歳で夕張行の列車を待ちます。ふとホームの列車の時刻表示を見たら、次は夕張行、その次は上野行。夕張と上野が並んでいて、なんかへんでした。
夕張行のジーゼルカーが、がらがら来ました。ほどほど混んだ車内。北海道弁の中でも、ああ夕張系ですわって感じ。追分でまたまた長く停車。僕は、駅を出て、ぶらりと歩きました。追分は、うんと懐かしい町。夕張線の起点。いつも僕が一人旅に出るときは、ここから夕張じゃない世界が広がっていました。蒸気機関車の写真を撮りに、よく来ました。あの頃は、とてもとても広い操車場、立ち入り禁止だらけのところを、どきどきしながら知らないお兄さんたちの後を追い走り回り、D51やC57の写真を撮ったものでした。あの頃、立ちそばもホームにありました。確か子ども料金で、夕張まで110円でした。...でも、今日の追分にあの頃の面影はなく、追分町町議会議員選挙の候補者の声が響くばかりでした。
追分を出たジーゼルカーは、とことこと山を登っていきます。もうほんの少しの距離なのに、東追分でまたまた長らく停車したりしながら、谷間はだんだん暗くなります。かつては、終着駅まで行っていたけれど、今は新夕張かつての紅葉山で降ります。降りると、父さん母さんがいました。ありがとう。
家に着き、ごはんを食べ、ゆっくりしました。そして、なんということもなく、夜になりました。
写真は、大沼公園駅前でギターを弾く僕。ちょっとしょぼいのだ。がんばらねばっ!