今日と明日と、休暇を取りました。あれこれお疲れさんということで、連れ合いぴよさんと一泊お泊まり会です。目的地は、八幡平の玉川温泉です。
四輪車で、CDを聴きながら、北上していきました。田尻を通り、築館に出て、東北道で盛岡です。さすがに上り線は混んでいました。途中、アテルイのことを話しながら、幾つも川を渡りました。
盛岡南ICから、国道に降りて、仙北町を抜け、県庁近くの駐車場に車を停めました。いつものじゃじゃ麺の「白龍」は、いつものように休みでした。仕方なく歩き、焼き肉屋さんで冷麺セットを食べました。久しぶりの冷麺でした。
盛岡から、滝沢を通り、岩手山を望みながら、八幡平を目指します。途中、お金をあんまり持っていないことに気付き、松尾の郵便局に助けられました。ぐんぐん標高を上げ、空気はどんどん冷たくなりました。いつも感じるのですが、蔵王に似ています。大きな木がなくなった荒涼とした中、冷たい風に吹かれるのは、嬉しいです。昨年の9月に、運動会の代休でバイクで来たことを思い出しました。そのとき泊まった後生掛温泉を通過して、しばらくして玉川温泉。ぴよさんは、初めて。僕は、温泉に入るだけなら、何度か来ましたが、泊まるのは初めてです。ぴよさんに「どんな感じの温泉?」と聞かれた僕は「病院みたい」と答えました。病院の待合室みたいな佇まいが、印象的なんです。
今回は、自炊部です。ご飯は、旅館部で食べます。バイキングです。布団、浴衣はありますが、歯ブラシやタオルはありません。当然、共同トイレです。それで、一泊7500円。まあまあですな。
ひとまず、岩盤浴のところに行ってみました。玉川温泉では、硫黄の吹き出る辺りの岩に寝ころび、その温かさで温泉効果を得る人が多いんです(写真は、そんなところをパチリの一枚)。行くと、みんなゴザの上でふにゃふにゃになっていました。かたまりとしての存在。まるで柔らかい石のようでした。ぴよさんは寝ころびます。僕はその近くのあけっぴろげな露天風呂に入ります。露天風呂のプロですんで、ぱっと脱いで、ぱぱっとお湯に浸かるのは任せてちょうだい!ってところなんです。風が気持ちよく、湯加減もグー。首都圏から来た方々と、あれこれとしゃべりました。でっかい声で笑いました。何だかんだ言って、一時間も入っていました。温泉のいいところは、語らいがあるところ。ああ、来てよかったよぉ。
今度は、内湯。それはそれは、お風呂のデパートなもんで、50%風呂、100%風呂、熱め、温め、蒸かし湯、打たせ湯、寝湯、飲湯...。僕は、木でできた箱の中に入り、首だけ出す蒸かし湯が好き。ふにゃふにゃになりました。ついでに、寝湯。跳ねるお湯が、目にしみると痛い痛い。何せ、玉川温泉は、硫酸のお風呂ですからねぇ。これまた一時間近く入り、さぁてとと上がりました。
食事は、旅館部の食堂でバイキング。大にぎわいです。僕はビールを買って飲むのですが、ぴよさんは「飲むのぉ?」という表情です。というのも、玉川温泉は、諸病に効くと有名で、周囲は病気の話ばかりなのです。「すごく重い話だよ〜」と小声のぴよさん。実際、耳を傾けるまでもなく、いろんな話が飛び込んできます。「私は、最初は歩けなかった」とかは序の口。「私は、咽でね」「私は、肺なんです」「一時はねぇ...」「ああ、あそこの先生は大丈夫」「ほらあそこの○○さんは、○○病なんだって、かわいそうに」「○○が効くって聞いたわよ」「明日は、雨かしらねぇ」「雨だからって、岩盤浴を止めるわけにはいかないよ。雨が降ろうが、槍が降ろうが、やることやらないと治るもんも治らねぇ」
さっき露天風呂で誰もが口にする挨拶が「あなた、どこ、悪いの?」というのが、分かったような気がします。食堂での会話で「あらぁ、付き添いの方なのかと思ったわ」というセリフも、よく聞こえました。それはまるで本当は70歳なんだけど「60歳だと思ったわぁ」と、年齢を若く言うのに、似てなくもないですなぁ。周囲は、み〜んな重い病気を患っている方で、そんな中どちらかというと元気っぽい二人がビールなんか飲んでいては...確かに問題かもしれません...。でも、みなさん、はつらつと話していて、全然陰気な感じはなく、前向きに日々を過ごしている感じが、いい感じでした。何だかんだと言っても、周囲の方とはおしゃべりしました。人生の先輩に感謝です。
夜、もう一回お風呂に入ろうかとも思いましたが、やめました。布団に入ると、いろんな音が聞こえます。近くの部屋の小さな子ども声、廊下のきしむ音、流しで水道を止める音、咳の音、窓を閉める音。テレビの音は当然なく、車の音もなく、酒盛りの音もないけれど、人が近くにたくさんいて、それぞれ夜を過ごしている実感がありました。「アパートみたいね」と僕が言うと、ぴよさんは「寮って感じじゃない」と言いました。うん、寮だ。長屋っぽい、人間の暮らしの匂いだ。