石垣島最後の日です。
昼過ぎの飛行機で沖縄本島に行くんです。初めは、二人で小浜島に行くことを考えていました。けれども、僕は石垣島を全然歩いていないので、石垣島巡りをしようと考えました。別行動もいいねと話していましたが、結局二人で石垣島をレンタカーでまわることにしました。これまた格安レンタカーをゲット。時計回りに走り始めました。風はとても強く、もしも僕だけ行動ならレンタルスクーターだなと思っていたところ、屋根の付いた四輪車でよかったなぁと思いました。
街を抜け、西側の海を眺めながら走ります。昨日海に入った靴は、メッシュでできているのですが、まだ半乾き。どうも、それが臭いので、途中でビーチサンダルを購入しました。鼻緒がちょっと痛いのですが、快適になりました。
海の色、森の色。北国とは違います。ヤエヤマヤシの群生しているところで、ヤシの木を見上げました。川を渡るたびに、ガジュマルに手を振ります。青空の下の雲は低く、そして速く走っていきます。思わぬところに、牛くんが潜み、目が合うと「何か用か?」と尋ねます。「いや、別に用はないよ。じゃましてごめんね」そう言い終わる前に、牛くんはまた草をもっさもっさと食んでいるのでした。
昼ご飯は「明石食堂」。八重山そばとソーキそば。丸麺。ソーキは、じっくり煮込んだとろぉ〜りもの。おいしかった。岬を巡ります。駐車場に車を停めるたびに、まわりが「わ」ナンバーばかりでした。
白保の川のほとりに車を停めました。そしてマングローブの森に足を踏み入れました。
どんどん伸びるマングローブの体。僕は、もののけ姫を想いました。樹々は、太古の昔、まだ人が謙虚に暮らしていた頃から、ここで根を張り、息をしてきたんですね。人間に飼いならされていない魂は、抗うこともせず、けれども決して従わずに、静かに佇んでいるのです。ああ、尊敬します。マングローブに軽蔑されてはならない。そう思いました。もしも人間が滅んでも、あの樹々は、森は、静かに嵐とたわむれるのでしょう。
レンタカー屋さんの車で石垣空港に着きました。予定していたよりも少し早くに着きました。すると、何ということでしょう、僕たちの乗る飛行機は欠航です。本土では大雪で大変なことになっているそうです。その影響で機体の準備ができなかったとのこと。早く来て僕たちとしてはラッキーでした、一便前の沖縄行が遅れていて、しかも空席があるということで、僕たちはその飛行機に乗ることにしました。味の濃いアイスクリームを食べ、飛行機へ。滑走路を歩き、階段で飛行機に乗っていくとき、フィレンツェから帰ってくるときのことを思い出しました。ああ、もう帰路です。
飛行機から見る海。サンゴ礁。ああ、牛くんたちは、やっぱりはむはむと草を食んでいることでしょう。蝶は、ゆっくりと舞い、クジャクは木陰でひそひそ話をしていることでしょう。猫たちは、観光客のビニール袋の音に反応しながら、誇り高い目で物乞いをしていることでしょう。10年後訪れたとき、あの葉っぱの上でテントウムシは詩を詠んでいるような気がします。僕がお爺さんになって訪れたとき、あのガジュマルは僕のことを覚えていてくれるかもしれません。ああ、ちっぽけな人間よ。ああ、ちっぽけな時間よ。人は、もっと無防備にその身をこの星に委ねていいのかもしれません。
八重山の島々に、とても感謝です。いい時間でした。
仙台から千歳に着くのと同じくらいの時間を掛け、飛行機は那覇に着陸しました。都会です。驚くべき都会。竹富島は、礼文島。黒島は、利尻島。石垣が、稚内。そして、那覇は、札幌という感じです。
那覇空港からモノレールに乗り、県庁前に降り、国際通りを歩きます。続く舗装道路、たくさんの信号、連なる自動車、たくさんの音と光、そして人。牛は、見当たらないし、クジャクもいません。石垣もないし、ゴマダラチョウもいません。ああ、石垣は、那覇と台北の真ん中にあったんだなぁと、そんなことを思いました。早くも、八重山が懐かしい。
さて、今日の宿は「柏青荘」です。国際通りをうろうろして、見つけました。これまた格安の民宿です。民宿と言っても、古めのマンションのワンフロアーを使った民宿。僕たちは303号室。マンションの一室なんです。ドアを開けたら、なんだか懐かしい感じがしました。学生時代のアパートのようです。畳敷きの部屋を、ぴよさんは喜びました。ほっとできる部屋。ああ、これはいいわ。
夕方、公設市場に行きました。人間臭い喧騒。ああ、これもよしだな。あれこれとお店をひやかし、国際通りのライブもやるというオシャレめな居酒屋に入りました。
オリオンビールを飲み、焼酎(珊瑚礁)を飲みました。ぴよさんは、ぶくぶく茶。ぐるくんを食べました。サラダにほっとしました。ライブは、キーボードを弾いて歌う女性。すぐ近くに座ったので、あれこれおしゃべり。後ろの席の団体は、何となく合コンっぽくって、何かなぁと聞き耳を立てていたら、ダイバースクールの団体。はりきって仕切る女性陣の一方、男性はみんな同じような地味な雰囲気で、興味津々でした。さすがに、へらへらと声を掛けることはせず、おとなしく残った泡盛のボトルをおみやげに、のんびりできる部屋に戻ったのでした。
写真は、石垣島での一枚です。