昨日へ     2004年12月30日   明日へ

那覇で目を覚ましました。本当は明日から2日レンタカーを借りる予定でした。宿も昨晩から今日までの2泊の予定でした。でも、変更です。居心地がいいので、3泊。レンタカーは今日一日にしました。今日は、レンタカーで那覇より北を目指します。

国道58号線。那覇を抜け、10年前の印象が少しだけある読谷村を抜けます。当面の目的地は「美ら海水族館」。水族館フリークを自称する僕としては、行かねばならぬところです。

途中、ブセナテラスの一角にある海中展望塔に寄ります。こういうのは、連れ合いぴよさんの予習のなせる術ですな。言われるままに、駐車場へ。そしてリゾートホテルのバスに乗り、展望塔に行きます。塔と言っても、海中に入るので、階段を降ります。な〜るほどね。魚たちが見えます。「熱帯魚だ」という声が聞こえますが、そりゃあここはまさに「熱帯」です。色とりどりです。塔と陸を結ぶ橋から、下を覗くと、餌を求める「熱帯魚」たち。それはまるで、岩出山の有備館の池の鯉のよう。ぱーくぱーくと口を開け、人間が放り投げる餌を食べる姿は、少しだけ悲しかったな。

名護でお昼ご飯。「丸隆そば」です。ソーキそばと、麩チャンプル。そばは、平麺でした。やっぱり平麺がいいです。麩チャンプルには、大盛りのご飯とスープが付いてきました。やっぱりこうじゃなくっちゃ! おいしく頂きました。ちなみに、お客さんはみんな地元でした。「わ」ナンバーの車が全然ないのです。

食べ終わる頃、米軍兵のグループが入ってきました。お客さんの密かに意識する空気が感じられました。給仕をしている女の子にへんなことでもしたら、抗議してやるぞ!と心の準備をします。しかしながら、オキナワの日常は、いつもこうなのだとすると、これは大変なことです。冗談でなく、命が幾つあっても足りない...ということになりかねないんですね。あたりまえかもしれませんが、何事もなく、丸隆そばを出ました。

「美ら海水族館」に着きました。満車の駐車場。あちこち回り、何とか停めました。まずは、イルカやマナティ、ウミガメたちを見ました。ウミガメの「ぷはっ」という息継ぎは、見ていてなぜか飽きません。好きです。

マナティを見ながら、ジュゴンのことを思いました。当初、辺野古への米軍基地阻止を闘う人への差し入れを考えていましたが「物見幽山ではいけないよ」というアドバイスもあり、物見幽山ということもなかったのですが、あえて行かないことにしたのです。ジュゴンの仲間のマナティが漂う姿を見ながら、海で体を張って闘う皆さんを思いました。現場で共に闘わないでしまって、ごめんなさい。僕は僕の持ち場で、皆さんのことを思いながら、闘います。

「いるかスタジオ」を見ました。イルカの訓練の方法や体の仕組みを、室内にあるプールの水槽で見るんです。どんなふうに訓練しているかは、興味深かったです。イルカのオスメスを見分けるクイズは、圧巻! めちゃめちゃ心に残りました。

続いて「オキちゃん劇場」。外のプールで、イルカのショーです。ゴンドウクジラもいて、楽しかったです。「いるかスタジオ」も「オキちゃん劇場」も、無料! そういえば、駐車場も無料。内容もいいので、満員。かなり感動です。

とても心に残ったのは、イルカたちの名前を大事にしていることです。「イルカ」とひとからげにしないで、「オキちゃん」「ゴンちゃん」というふうに、一頭ずつ違うことを説明しながら、名前を覚えてほしい、個性があることを知ってほしいという進め方をしていたんです。すごく好感が持てます。名前って、関係性を対等に持つための第一歩です。「イルカ」って言ったら、そこに「個」はなくなっちゃうんです。名前は、記号とは違います。「No1」とか「2号」などという示し方は、呼ぶ方の都合だけでしかないんです。

ちなみに、僕たちの家には「たろう」がいます。地中海を一緒に見に行った「たろう」は、もう中学生です。今回は、残念ながらお留守番です。彼は、実は「さる」なんです。しかも「ぬいぐるみ」です。これは彼には内緒です。たろうに「あんたは、さるなんだよ」なんて言うと、きっと彼はショックです。「このぬいぐるみ、かわいいね」なんて誰かと話したりしたら、きっと傷付くに違いありません。「たろう」を「たろう」と呼ぶことで、僕は彼との関係を保っています。「たろう」という名前を持つことで、彼はきっと自尊心を保っているのではないかと思います。「オキちゃん」たちも、きっとそうでしょう。

ただ、オキちゃんたちには聞こえないように話すんですが、珊瑚礁の波を遠くに見る「オキちゃん劇場」で、ふと思いました。オキちゃんの弟がやってくるんです。人間に呼ばれるような名前を持たない野生のイルカです。弟は言うんです。「兄さん、こんなところにいないで、海に帰ろうよ」って。

「海って、何だ?」「海だよ、ふるさとだよ。忘れたのかい?」「そこは、おもしろいところかい?」「おもしろいこともあるけれど、辛いこともあるよ。とても普通なことだけとさ」「辛いことって、何だい?」「空腹とか、嵐とか、サメに襲われるとか、そりゃあいろんなことがあるさ」「えっ、餌をもらえないことがあるのかい?」「そりゃそうさ」「ここでは、ちゃんと食べるものがあるよ。仕事は辛いけど、そこではどんな仕事をするんだい?」「仕事なんてないさ」「えっ、仕事がないのか?!」「そうだよ」「じゃあ、何をするんだい?」「生きるだけさ」「!」

そして、海(ふるさと)に戻った「水族館のイルカ」は、海には波があること、深いこと、いろんな生き物がいることに、きっと目を輝かせると思うのですが、生きて続けていくことは、ひょっとするととても難しいかもしれません。ましてや、水族館のイルカのほとんどは、水族館で生まれ育ったのだそうですから。

人にも、イルカにも、決まった「幸せ」の形は、ありません。「幸せ」は、たどり着く目標ではないし、結果でもない。果てしない「幸せ」は、まるで「平和」のように、遠くしかも身近。オキちゃんに、こんなことは話し掛けないのですが、歓声上がるお客さんの中で、いろんなことを考えました。

水族館に入りました。何といっても、ここの目玉は、マンタとジンベイザメです。でかい水槽に、でかい魚が漂います。すごいことに、この水族館では、餌をあげるところを見せてくれるんです。オキアミをプールに入れると、ジンベイザメは縦になって、すごい勢いで大きな口を開けて、水を吸い込んでいきます! 渦になって水とオキアミが、口の中に入ります。体長6mの魚を目の前にするだけで感動なのに、本来横向きと思っていた6mが縦になるのです。驚きでした。水槽前にぎっしり詰まった人間たちは、やっぱり大きな口を開け、上を見上げて歓声を上げます。ああ、人間はちっちゃいです。

マンタが、大きく羽ばたく姿を見ながら、僕は黒島の海を想いました。生きている海で、生きているマンタに、偶然出くわす。出逢いには、予定はなく、別れにも予定がない。僕にとって息のできない海中で、マンタは自分の世界を過ごしている。僕とマンタの目が合うけれど、マンタは何も言わずに、静かに遠くに去っていく。ほんの短い時間を、僕は宝石のように暖かめるだろう...。そんなイメージ。

水族館を出て、帰路です。本当は、名護の「ジュゴンの家」に、米軍基地建設阻止を闘う地元の皆さんにカンパを持っていくつもりでした。けれども、「ジュゴンの家」の場所をしっかり調べないで来てしまったので、レンタカーを返す時間までに那覇に戻れるか心配。行かないでしまいました。郵便振替でカンパを送りましょう。ならば読谷村のチビチリガマに寄ろうと思いました。以前行ったことがあるので、何とかなると思ったのですが、やっぱり時間がなくて通過です。家で愛用している素焼きの日本酒用の器は、読谷村で10年前に買ったものです。国道沿いの販売所。せめて、そこに寄っていこうと思ったのですが、もう閉まっていました。残念。でも、水族館を満喫したから、いいことにしましょう。何より、一緒にいるぴよさんが満足しているのです。これでいいのだと、思いました。

国道58号線を南下して、那覇。レンタカーを返しました。何とか時間に間に合いました。ちなみに、石垣で借りたのは、三菱のコルト。今回は、トヨタのパッソ。どちらもいわゆるコンパクトカーで売り出し中の車です。どちらもコラムシフトで、どちらも室内広めで、印象はいいです。乗り味としては、コルトのほうが安定していました。また車体としてもしっかりしていた印象です。風切り音も少ないように感じました。ただ車体の大きさを体感しやすいのは、パッソのほうでした。車庫入れなどは、パッソのほうが初心者向けです。まあ、僕はどちらの車もマイカーとしては選ばないんですけどね。

旭橋から柏青荘まで歩いて帰ります。バスターミナルで、横断歩道のないところを行こうとして、誘導をしていた人にホイッスルを吹かれ、叱られました。ごめんなさい。歩道橋を渡りました。

食事に行くため、国際通りに出ました。「炭火屋」に入りました。佇まいと、「山羊刺し」という看板に魅かれたんです。カウンターに座りました。二階はにぎやかです。オリオンビールと、サンピン茶。お通しは、胡麻豆腐みたいなもの。島らっきょを注文しました。いやぁ、どんぴしゃり! 今の気持ち・体調にぴったりのしゃりしゃり&強烈香り! 行者ニンニクにも似た感覚。大好き。砂肝を焼いてもらいました。牛さんも焼いてもらいました。そして、山羊刺し。

今回、沖縄に行くことを決めてから、何冊か沖縄本を買いました。実は、僕はほとんど読んでいません。ぴよさんにお任せです。ただ、僕が読んだ一冊に山羊さんのことが載っていて印象的でした。「まろやかにクサクサ」「ヤマトンチュには無理さぁ」...そう言われると気になるのです。注文しました。「山羊刺し、一つください」「はい、玉ありですか? 玉なしですか?」 ...この時点で、ぎょ!ですね。もちろん「玉なしにしてください」です。

かなり時間がたってからやって来た山羊さん。見た目はなんてことなしです。どれどれと、口に運んで、なっななな〜るほど! まろやかにクサクサです。でも、ぴよさんの方が名言だな。彼女曰く「おうちの味がする」。そう、山羊さんのおうちの味が、じんわぁ〜り、お口に広がるじゃありませんか。すぐにオリオンビールのジョッキを口にしたのは言うまでもありません。でも、なぜでしょう。二度と口にしないって感じじゃないんでねぇ。ホヤが好きでない僕は、あれは食べないです。無理やり食べることはできないことはないけれど、ホヤの悪口はいろいろと言えるな。ホヤ好きな方、ごめんなさいね。山羊刺しを完食しつつも、「玉つきにしなくてよかったぁ」という感じです。締めは、ソーメンチャンプルー。ふぅ〜、今日もいろいろあった1日でした。

後で、沖縄本を読むと「食べやすいのは刺し身でしょう」って書いてありました。じゃあ、山羊汁って、どんなだろう? 興味津々、怖いもの食べたさ。

写真は、水族館の水槽の中のマンタ。下から見上げたところです。

昨日へ        明日へ

はじめのページ