思春期の記憶は、深く刻まれるものです。
僕は、毎年「12月14日」と言えば、室蘭本線のことを思い出します。僕が小学5年生の12月14日、室蘭本線最後の蒸気機関車が追分を走ったのです。C57でした。
僕の小学校5年生と言えば、SL一色です。蒸気機関車を追いかけて、12枚撮りのフィルムの入ったお爺ちゃんお下がりのカメラを持って、あちこちの駅の構内を歩いていたのでした。それはそれは夢中でした。SL本など凝視する日々だったので、パッと一瞬見るだけで、「D51の321だ」とか判別できるくらいでした。ちなみに、よく乗る夕張駅発の列車は、7:17でした。夕張から追分までの子ども料金は110円。これまた忘れないんだな。硬い紙の切符でした。
あの頃の室蘭本線の客車は、木造でした。シートが硬い奴。垂直に立った背もたれでした。ドアは自動なんかじゃありません。冬に開けっぱなしで、風も雪も吹き込んでいたときは、便所に行くのが恐かったです。便所は、ぼっとんトイレで、線路にちり紙がひらひらしていましたっけ。
蒸気機関車は、えらく人間臭いものでした。何よりも、効率が悪いのが見え見えでした。運転するにも、機関助手が、スコップで石炭をくべるんですから、大変なものです。考えてみると、少し前まで、人間は額に汗するのが普通だったんですよね。
ああ、あれから30年が経っています。電車のリクライニングシートは「楽」かもしれないけれど、人間はどんどん「人間くささ」を失っているようで、心配です。仕方ないので、僕が「人間くささ」をいっぱい吐き出してみましょうか? できれば、皆さんもご一緒に!
写真は、そんな30年くらい前の夕張駅構内です。