草津温泉で目を覚ましました。体から温泉の硫黄の香りがしてきます。幸せです。ずっと気になっていた足首の漆かぶれも、昨日の草津温泉入湯ですっかりさっぱりすっきりでした。
朝ご飯を頂きました。もう他のお客さんは、食事していて、先輩方から「あら、おにいさん、どこから来たの?」など声掛けられました。別なお客さんとおかみさんのお話も聞こえました。皆さん、お馴染さんなんですね。湯治のお客さん。度々には来ているんです。ああ、なんかいい感じだなー。食事を終えて、荷造りして、お支払い。バイクに荷物を載せながら、近所の方とおしゃべりしたり、猫見つけて写真撮ったり。のんびり幸せな時間です。
バイクを置いて、温泉に入ってきまーすと、声掛けて、今日はビーチサンダルでぺたぺたと出かけました。写真撮ったり、「地蔵の湯」に入ったり。ああ、のんびりです。温泉効能って、湯の化学的成分だけでなく、このまったり感なんだなーと、思いました。世知辛い仕事場で、「意味ない」「無駄」の即決になれると、どんどん人の器が小さくなり、自分も追いつめられ、心も体も蝕まれてしまう...。たまには、温泉が必要です。ま、世知辛くなければいいんですけどね。
宿に戻り、ご挨拶して、バイクを走らせます。目的地は決めていませんが、そろそろ御盆の渋滞が予想されるので、首都圏には行きません。ならば北上です。土地勘が無いなりに北上していたのですが、はたと気付きました。粟島に行ってみよう!と。ここのところ、気になっていたんです。利尻に子どもの頃しょっちゅう行っていたゆえに、離島への憧れって思春期に沁みているんです。
距離も結構あるなーと考え、水上の道の駅で一休み。地図を見ながら考えていると、あれ? 音がするじゃないですか。何の音って、蒸気機関車の汽笛です。なるほど、お盆の時期の特別列車でしょうか。ああ、気になるなあと思いつつ、でも列車を追いかけるならば、粟島に行けないかも...。ふと見ると、煙が見えるじゃないですか! 急いでカメラのレンズを換えて、撮りました。ひとまずほっとしました。さて、粟島へのフェリーですが、時刻が分かりません。駆けつけたのにぎりぎりで乗れなかったりしたら、がっかりですね。こういうときは、インターネット。iPhoneで調べました。おっ16:30が最終便です。ならば、やっぱり高速道路に乗りましょう。
水上の道の駅を出て、関越自動車道に乗りました。乗ったらすぐに「雨注意」という表示です。あらまー! 谷川岳を抜けたら、雨の中を走るのかー! でも乗っちゃったから、ドンマイです。暑いけど、雨具を着込んで、ゴー! トンネルを抜けるのがドキドキでしたが、抜けたら、青空! な〜んだっ! ほっとして、すぐに雨具脱いで、ぐんぐんと距離を稼いでいくのでした。新潟を通過して、日本海東北自動車道。なるほど、無料の社会実験ですか。でも、それゆえでしょうか、1車線になって追い越しできないのに、車はいっぱいいて混み合っていて、あらまーって感じ。僕は、スタンディングで走るのでした。信号で止められないのはいいけれど、好きなところで止まれないのは、嫌ですなー。でも、村上に16:30。辿り着かねば...。
村上に着きました。粟島汽船・岩船港に行きました。陽射しが強いです。バイクを止めて、フェリー乗り場に行ったら、なんと高速船のスクリューが流木で破損故障とのこと。16:30が出港できない分、18:30に普通船が出るとのこと。なぁるほど。ひとまず、フェリー乗り場で粟島のパンフレットを手にし、民宿に電話をしました。予約OK。遅くても夕飯も大丈夫とのこと。ありがたかったです。2時間以上時間があるので、さぁてどうしようかと思いながら、バイクを走らせました。港を回り、瀬波温泉を走り、ちょいと迷いましたが、温泉に入ることにしました。草津の後では、何ともおとなしい温泉。ほっとしました。マッサージ機に硬貨を入れようかと思いましたが、時間があります。マッサージをしてもらうことにしました。久しぶりのことです。いやはや、足を揉まれながら、痛い痛い。マッサージしてくれる女性は「すごく硬いです」と言っていました。ふくらはぎも、痛いくらい揉まれました。肩もうんと凝っているとのこと。自覚あります。いやはや、揉まれに揉まれました。終わってから、自分で脚を触って驚いたほどでした。ああ、重労働をありがとうございました。
フェリー乗り場に戻りました。切符を買いました。粟島には、バイクも自動車も持っていくことはできません。バイク置き場について尋ねたら、1台なら車庫に入れてあげましょうということで、入れてもらいました。感謝です。カメラと下着とタオルとiPhoneを持って、船に乗ります。
がらがらでした。臨時便ということもあり、函館発大間行の最終便を思い出させる感じです。僕は、甲板に出て、海を眺めました。凪です。夕焼けも穏やかなピンク色。静かな夕方。釣具を持って乗った青年たちの声と、後は波の音、エンジンの音。雲が静かに流れ、海は大らか。だんだんに島が近付きます。2時間余りの船旅。暗くなった粟島に到着しました。民宿の旗を持った旦那さんと息子さん。車に乗り、宿へ。お父さんが息子に言います。「いつもと違うほうの玄関だからな」「分かってるよ」息子さんに玄関を案内されます。息子さんは、小学1年生くらいかな?
宿で、遅い夕飯をいただきます。広い座敷に僕だけ。料理は、魚づくし。焼き物、煮物、揚物、刺し身。全部新鮮! ビールもいただきました。おかみさんとおしゃべりをしました。もともと日本語がネイティブじゃないようですが、とても明るく気さくで、いい感じでした。おかみさんがいなくなり、また一人で食べて飲むのですが、向こうの部屋の声が筒抜け。そのアットホームな雰囲気に、民宿もいいなぁと感じたのでした。
粟島の夜。ほっとするのは、車の音がしないこと。人の暮らしの音がいっぱい開け放たれていること。「プライバシー」という言葉(概念ではなく)が、人と人との良いかげんなつながりを薄めたり、絶ったりしたのではないかな〜と、民宿の海の幸をいただきながら、思う夜でした。
写真は、今夜の粟島への甲板での1枚です。