粟島で目を覚ましました。裏のお店の自動ドアがしゃべっているでしょう機械的な「イラッシャイマセ」が何度も聞こえます。人の声がよくよく聞こえ、車の音はしません。テレビの音も聞こえません。とても自然な朝でした。
朝食は、昨晩と同じところでしたが、隣の部屋で泊まっていた母娘が、そちらの席にいました。僕よりも若い母親と、小学2年生くらいの娘。二人の会話を聞きながら、魚づくしの朝食でした。いゃあ、おいしかった! 家族旅行、いいなぁと感じました。教室でみんなと過ごす時間を懐かしむ気持ちにもなりました。ああ、僕は学校で仕事を続けなくちゃいけないなー。そんなことも思いました。
食事を終え、チェックアウト。宿を出て、港に歩きました。12:30が出港の時刻です。それまで、島を巡りましょう。当初は、バスで釜谷まで行ってみようと思ったのですが、ふと自転車で回るということを思いつきました。アップダウンが大変そうですが、まあ何とかなるだろうという思いです。また、バスよりも撮影ポイントを歩きやすいだろうとも思いました。自転車は粟島浦村役場で8:30からレンタルできるとのこと。8:30になるのを待って訪れました。あちこちに句碑があり、それを5つ以上デジタルカメラで撮ってきたら、くじを引いて景品が当たるとのことでした。ま、そういうのもありますなーと聞き流し、僕は釜谷への山道を行きました。
自転車好きですが、体力が備わっているわけではありません。山道をちょっと行くと、もう歩き始めました。汗はだらだら。おまけに蚊やブヨが寄ってきて大変。でも、戻るわけにも行きません。はあはあ言いながら、登ります。セミが暑さをより一層演出します。乗ろうかと思ったバスが追い抜いていきます。窓が締め切られ、きっとクーラーが効いていることでしょう。早くもタオルがすごい匂いになっていますが、まだ峠の頂上には着きません。ふー。
頑張って頑張って、頂上です。見晴らしは開けません。でも、下りは乗りっ放しです。ブレーキをキーキー響かせながら、坂道を下ります。釜谷キャンプ場入り口。自転車を置いて、歩いて下り、浜に着きました。何人かの人たちがテントを立てていました。撤収して、今から歩き始めるカップルもいました。湧き水を飲んでいたら、年齢不詳なんだけど若いビキニの女性も飲みに来て「こんにちは」。おじさんとしては、ビキニにドキドキしながらも、何もしゃべらないのもナンなので、「虫に刺されませんか」なんて話しました。
キャンプ場入り口からまた自転車で坂を下り、釜谷へ。家族連れが、みんな幸せそうでいい感じでした。自然の中での体験をさせるには、ぴったりな環境ですもんね。バスがまた着きました。宿で一緒だった母と娘、そして父親と3人が降りてきました。ああ、いいなぁって感じ。しばし、僕は考えました。今来た道を戻るべきか、または島の南半分を回る道を選ぶべきか。少しだけ先輩の男性が声を掛けてくれました。「自転車で来ましたかぁ、大変でしたねぇ」 僕は、南側を回るか迷っていることを話しました。すると、すぐ急な坂道になるけれど、その後はなだらかですよとのこと。「ま、関東から来た者ですけどね」と最後に。僕は、何となく背中を押される気がして、南半分を回ることにしました。海を眺めながら、坂をぐんぐん登ります。当然、自転車は押していきます。車が一台ぎりぎり走れるかな?って道。軽トラックとすれ違いました。ワゴンRのパトカーが1台行きました。スクーターのおばちゃんが一人。そんな道。
登っている途中で、カップルが二人自転車で坂を降りていきました。「こんにちはー」 しばらく行って下り道。ひとまずほっとしました。下りかけたところで、家族連れ若い夫婦と後ろに乗った小さい女の子。女性ははきはきと「ありましたか?」と聞くので、何ですか?と問うたら、なーるほど句碑です。句碑の撮影を頑張っているんですね。ああ、2つくらいあったと思いますよ。そう言ったら、それだけしかないのですか!という表情。登りはあと少しですが、虫に刺されないように...と話し、別れました。誰にも会わない海の道、下り自転車の道。いい風でした。
さっきから、何となくチェーンの調子が変だなーと思っていたのですが、ある句碑で自転車を止めようとしたとき、びっくり! 何とスタンドが使えないんです。というのも、後輪の軸が外れかけているのです。ありゃあ、故障だ! これは走るうちはよいけれど無理をすればばらばらになります。僕はすぐに走り始めました。止まらないで何とか役場に着かなくては、疲れるし、何よりフェリーに間に合わない可能性もあります。内浦キャンプ場の前を通過し、からからと変な音を立てながら、それでも何とか役場に到着しました。ああ、平坦な道でよかった。
役場で自転車を返し、故障のことを伝えました。潮風で錆びやすいことを話してくれました。句碑の写真を見せて、くじを引きました。粟島のイラストとバッジが付いたバックをもらいました。500円の手ぬぐいも買いました。ひとまず満足なのでした。
フェリー乗り場に行き、並んで切符を買いました。買ったのでほっとして、出港までの時間、宿のあったあたりをうろうろして写真を撮ったりしました。そして出港。港では、大漁旗を振るおやじさん、手を大きく振るおばさん方がいて、何ともいい感じでした。甲板では、小さい子が「知らない人だよ」と母親に言っていましたが、母親曰く「こういうときは、大きく手を振るんだよ」。僕も頷き、手を振るのでした。すると、フェリーが見えた家の窓からも、手を振る人。ああ、島はいいですなー。
島に来たときと対照的に、船室は満員。僕は甲板の椅子に座っていました。さっき会った自転車の家族と会釈し、本を読み、写真を撮り、ときどき眠り、村上の岩船港に近付きます。海は、とろとろしそうな凪。凍らせたジンを思うけれど、水温はきっと高く、気温も湿度伴って、高いという感じでした。いつもの思いつき軽はずみで、粟島滞在15時間。充実満足いい天気。旅だなぁと感じましたねぇ。
岩船港に降り立ちました。粟島汽船の方に、バイクのことを告げて、車庫から出し、またご挨拶して、走り出しました。さすがに今日は、帰宅です。
「笹川流れ」という景勝地が気になります。村上から鶴岡までの海岸線。僕は、鶴岡から新庄、大石田、銀山、加美町というルートで帰ることを考えました。笹川流れをずんずん行きました。なーるほど、北海道でも見た感じの岩肌。海岸は、あちこち海水浴場で、夏!って感じですね。
鶴岡に着くと、なかなか時間が掛かっていて、心配になってきました。何時に着くだろうって不安。雨も降ってきそうです。迷ったあげく、高速道路を選ぶことにしました。山形道と東北道で帰るというルートです。始めから笹川流れなんか来なかったら、シンプルに帰れたのに...と少しだけ思いましたが、まあ後悔なしです。途中、父さんCB、母さんドラッグスター、娘さんドラッグスターの後ろ席という人たちを見かけました。ああいいなぁと思いました。雨注意と表示されていたので、雨具を着ました。山形から宮城に入ったら、すっかり雨。がんがんと雨。なかなか雨と縁のなかった今回の旅でしたが、最後は雨! 泉で高速道路から降りて、松山町へ。これまた雨。すっかり濡れて、それでも7時半には帰宅することができたのでした。92350kmだったメーターは、94053kmに。1703kmの旅でした。
写真は、今日の釜谷キャンプ場です。