マカオで目を覚ますのは3回目。明日帰路につくので、全日マカオは今日が最後です。だいたいマカオの地図が頭に入りました。お金の感覚も身に付きました。広東語はあいかわらず使えませんが、英語の感覚は日常になりました。そんなところで、旅は終わりに近づくのです。
ホテルのレストランで、3日連続で同じテーブル。まだ食べていないものを選びます。昨日と同じ席に今日も座っている人もいます。日本語が聞こえないのが、とても心地よいです。小さな子がたくさんいます。いろんな言葉を話しています。でも、みんな同じものを食べていて、そんな風景は、ちょっとよいですな。世界の平和って風景の一つと言えそうです。何年ぶりかにトーストを食べました。懐かしい味でした。お腹の大きな紳士がスパークリングワインを開封したので、僕も1杯いただきました。
夕飯を食べる予定を約束しました。僕は、持っている香港ドルを有効に使って帰国することを考え始め、結果タクシーを利用することにしました。もともと高くないタクシー料金です。日本なら700円ってところ、150円くらいなんです。食べ物での物価の違いは感じませんが、タクシーは格安です。そんなタクシーを使わない手はありません。メモ帳に、海事博物館と書き、車に手を挙げました。昨日も一昨日もなかなか停まらなかったタクシーでしたが、今朝はすぐでした。
海事博物館は、マカオ半島の南端。地図によると近くに廟もあるようでした。着くと、媽閣廟には胸に同じバッジを付けた団体観光客でごったがえしていました。そんな中をどれどれと歩きました。登りました。3日間歩いて思うこと、中国の人は写真を撮られるときのポーズがうまいこと。マカオにはスクーターがあふれているけど、カブは走っていないこと。走っているバイクで実用車として頑張っているのは125ccの懐かしいバイクたちということ。海事博物館に入ると、漁のこと、航海のこと、アヘン戦争のことなど展示されていました。日本に関わる展示は、火縄銃の種子島がメインでした。なるほどと思いました。
海事博物館に来る人たちは、みな向こうから来るので、何かあるかと思って、向こうに歩きました。けれども、あるのは駐車場でした。中国からの観光客を乗せたバスは右側通行のバス。それが連なっているのでした。僕は、湖の近くのベンチに腰を下ろしました。いい感じの日向でした。iPodを持ってきたことを思い出して、イヤホンを耳にして、YUKIを聴きました。風景に色がつけられるような、そんな感覚。音楽ってすごいです。ああ、歌って素晴らしい。青年が坂道ダッシュを繰り返していました。髪の毛が長いおじいさんが、小鳥のカゴを持って散歩していました。遠い橋は、タイパへ向かう車を導いていました。川をフェリーが上っていきましたが、きっとそこでは広東語のおしゃべり。太陽は、福島も八王子もカリフォルニアもドーハもガラパゴスも照らしながら、いつも通りなんでしょうなぁ〜。YUKIに肩をもんでもらった気持ちでした。
タクシーを停めました。メモ帳には「九澳七苦計茎小堂」と書きました(茎の草冠は、取って示しました)。タクシードライバーは僕と同い年くらいの女性でした。ちょっと「ん?」という顔でしたが、OKと言いました。橋を渡り、タイパへ。一昨日昨日と来たコロアンの教会には向かわない道。マカオ全体の南端にある教会が「九澳七苦計茎小堂」。地図で見ると、バスも通っていないようです。ならばタクシーというわけでした。何がなんでも「九澳七苦計茎小堂」に行きたいというよりは、なかなか行けなさそうなところなので「九澳七苦計茎小堂」に行ってみようと思ったというのが、正確ですね。
ドライバーは、僕と同じくらいの片言英語で「15年くらいこっちには来ていないんだ」と言って、バス停にタクシーを停めて、行き先を聞いていました。バス停近くに人がいてラッキーだったね。それから道を2回修正しながら、何とか「九澳七苦計茎小堂」に着きました。当初は、そこを見学してからバス停があるところまで歩けばいいやと思っていましたが、なかなかの山道で、しかもいつバスが来るとも分からぬ様子でしたので、「5分写真撮ってくるから待っててくださいな」とお願いしました。しぶしぶでしたが、okでした。お金払ってから、階段を駆け上がったところ、もっともっと続く様子。上から「10分に伸ばしてちょうだい」と言いました。頷くのを見て、走りました。海がぱーっと開ける様子をイメージしました。汗だくで坂道を上がりました。上がったところには、柵があり、その向こうに灯台。それだけでした。がっかりして、駆け降りました。広がる海ではなく、石油備蓄基地があり、その向こうにマカオ空港の飛行機の離陸音。
坂を降りたところにあったいい感じの建物を撮りました。猫がいました。ああ、ずっとここで暮らしてきたんだろうね。走っていくと、教会のような学校のようなところがあり、草刈りのおばさんたちが談笑していました。ほっとして、挨拶しました。近くには、猫たちがお昼ご飯。いっぱいの猫、いっぱいのご飯。それを見つめる犬は、どっしりとしていました。僕は、そこでしばらく佇みたかったのですが、ドライバーを待たせているので走ります。結局15分滞在。「ごめんなさい、遅くて」と行くと、家族連れ。若い夫婦と小さい子二人。一人はお母さんと手を繋ぎ、僕を見ます。髪の毛が長くて、髭も仙人系にもはもはしていて、見たことないタイプでしょう。まじまじと見ていました。もう一人の子は乳母車でした。車など通らない山の中のこと、一緒にタクシーに乗れないかということはすぐに分かりました。そりゃもう当然OKです。近くの浜までということでした。
女性は英語で話します。日本から来たのですか?というので、そうですよと話します。きっとドライバーさんと話していて、漢字を使うけれど広東語は話さなくてアジア人という様相ということで、日本人と思ったのでしょう。僕は、暑いですねぇ、冬とは思われないです、クリスマスとは信じられないくらい、と話しました。会話したいところでしたが、ドライバーさんの広東語が勝っていて、車の中は広東語でいっぱいになりました。浜に着きました。僕は日本の小学校の教員なんですと話しました。すると、あらまー私は高校の教員ですよ!と女性が言いました。家族の写真を撮らせてもらいました。いろいろおしゃべりしたかったなあ。でも、タクシーの後ろの席に移動して、手を振るのでした。
しばらくして、トイレに行きたくなりました。まずいですなー、今度の行き先は市街の観光地。なかなか時間が掛かることでしょう。着いてもすぐにトイレは見つからないでしょう。メモ帳に「手洗間」とトイレを意味する文字を書いておきました。すると、神様っているんですなー。道路工事で片側通行のところで、停止。その近くに公園のトイレ! すかさずメモ帳を示しました。ドライバーさんは頷き、ドアを開けてくれました。走っていって、すませて戻りました。ほっとしました。走り出してから、ドライバーさんが自信なさそうな英語で「漢字がうまいね」と言ってくれました。二人で笑いました。「日本人だから漢字も書けるんだな」と話しました。
東望洋炮台に着いて、ドライバーさんに手を振りました。ジョギングしている人がいっぱい。そんな中、東望洋炮台に上ると、なんとまー、連れ合いぴよさんとお母さんにばったりでした。びっくりしましたな。すぐに分かれ、僕はベンチで公園の様子を眺め、坂を下りました。途中でまたお母さんとぴよさん。日本人観光客に何やら地図を示しながら教えているようでした。僕は、小さな市場で肉を眺めました。野菜売り場の近くの麺屋台で、一番安い(10ドル)野菜麺を食べました。細麺はいつものこと。スープは、インスタントラーメンのそれって感じでした。麺の味よりも、お店の人、通り過ぎる人たちの味が、沁みましたなぁ。モンテ砦に上がり、砲台のところで観光客のカメラでツーショットを撮ってあけで、聖ポール天主堂へ行きました。するとまぁ、たくさんの人! ここでもいろんな人のカメラを手にしました。日本語を話す人にも会いました。今日は、お金を使うことが命題の一つでした。本屋さんに入りました。イタリアや台湾を訪れたとき、本を買いました。今回もって思ったんです。いろいろ立ち読みしましたが、結局クレヨンしんちゃん一冊、子どもの安全のための教本みたいなの一冊、子ども向けの頭の体操本一冊買いました。動物のかわいいシールも買いました。セナド広場近くのお土産屋さんで、職場用の食べ物お土産を買いました。福隆新街のお土産屋さんで、夕張用の干し肉など買いました。お金がなくなっても不安に感じないのは、この街に慣れたからですな。ああ、旅です。
ホテルに戻り、すぐに夕食に行くことになりました。今夜は、噴水ショーを見たホテルの中華料理屋さんです。タクシーで行きました。カジノの中をうろうろしました。開店と一緒にお店に入りました。メニューに日本語があったので楽でした。順を追ってオーダーする自分に、なんだか大人になっちまったなーと感じました。前菜で頼んだ青トウガラシは、とても大きく辛く、とても美味しかったです。この旅で一番心に残る味。鳩をいただき、アワビの載った焼きそばを食べました。青島ビールと、マカオビールをいただきました。お茶もいっぱい飲みました。昨日と違う噴水ショーを見て、ホテルに戻りました。
今夜も最終夜散歩をしましょう。漁港を歩いていなかったので、ホテルの北側を行きます。停泊している大きい船の間を行き来する小さな船。利尻の磯舟くらいのものが何艘か寄り添っているのが見えたので近寄ったら、国境警備の監視員のような人が窓を開けてこちらを監視しました。僕は、ごめんなさいと言って、それでも写真を撮り、離れました。後から見たら、その小舟の中には毛布に包まる労働者が一人こちらを見ているのでした。フェンスがあるので、海には下りられません。埠頭の匂いのする道を歩きました。明かりがついている店は、料理店。店先には発泡スチロールが並び、その中には魚が待機していました。ペットボトルの中に尺物のシャコ! シャコが好きな僕! しかも三陸のシャコは放射能が心配。食べたいと思ったのですが、中年おじさんのお腹は万能ではなく、やむなく諦めました。せっかくお店のおばちゃんが「どう?」って出てきてくれたんですけとね。ああ、あのシャコを塩焼きでいただいたなら!...今書いていて後悔しています。残してもいいから食べるべきだった!
犬の家族が薮で暮らしていて、警戒しているのか興味あるのか出てきました。僕は「何もあげるものないよ」と今夜は日本語で話しました。写真撮ろうとしたら、親犬夫婦が慌てて逃げて、子犬が蹴飛ばされていました。あらまー。港から坂を上り径を行くと、お寺がありました。猫がいました。最終夜にして、いっぱい出会いました。夜見る猫は、みんな黒目が大きくて可愛く見えます。何となく人間にもいえる例えかもしれませんな。僕は、お姉ちゃんがいるような飲み屋さんには行きませんが。ホテルに戻る前に、またコンビニでビールを買いました。ホテルの部屋で写真の整理をして、マカオの夜はふけていきました。
写真は、今日タクシーをご一緒したファミリーです。